『ネルソン・マンデラ』
『ネルソン・マンデラ』
が出ました。
カディール・ネルソン 作
さくまゆみこ 訳
鈴木出版
2014.02
原題:NELSON MANDELA by Kadir Nelson, 2013
昨年12月に世界中の人から惜しまれて亡くなったネルソン・マンデラの生涯を描いた絵本です。作者は、アフリカ系アメリカ人のカディール・ネルソンで、原著が去年の1月に出て、コレッタ・スコット・キング賞のオナーになったので、版元には日本語版を早く出したいという意向がありました。でも、文章を読んでみると、アパルトヘイトが肌の色で差別していた小アパルトヘイトの側面しか描かれていない(白人専用だった海岸に黒人も入れるようになったから解決したというような)ことに、私は疑問を持ちました。小さな子どもが読む絵本なので、詳しい説明ができないのは仕方ないのかな、と思う一方で、やっぱりアパルトヘイトが政治・経済の巧妙なシステムの一環だったという点も、どこかで示唆しておきたいと思ったのです。
それで、作者後書きのかわりに、日本でそれを補うような文章を入れていいか、と版元から作者にきいてもらいました。かなり後になってからオーケーが来て、私はアフリカの専門家である勝俣誠さんか、反アパルトヘイト運動を日本でになっていた楠原彰さんに後書きを書いてもらいたいと思いました。でも、予算の関係か、自分で書くようにとのこと。絵本を読むような子ども向けにアパルトヘイトについて語るのは、なかなか難しいことでした。
マンデラさんのもともとの名前は、Rolihlahla。ネルソンは、学校の先生につけられた呼び名です。もともとの名前はコーサ語なのでクリック音が入っているのでしょう。これをどう表記すればいいか、悩みました。自伝の『自由への長い道』には、ロリシュラシュラと書いてあるのですが、ウィキペディアなどではホリシャシャ。お葬式の時に孫息子が話しているのを聞くと、ホリシャシャのほうが近い。それで、私は最初ホリシャシャにしていたのですが、途中で南ア大使館にきいてみることを思いつきました。大使館からの返事は、ロリシュラシュラ。音で聞くとそうは聞こえないのですが、大使館の言うとおりに表記することになりました。また自伝の中に書いてあることと、マンデラ・ファウンデーションが述べている事実にも違いがあり、何が本当なのかつきとめるのは大変でした。
もちろん、アパルトヘイトでさんざんに歪められた南アフリカは、ひとりの英雄が簡単にひっくり返せるようなものではありません。2004年に私が訪れたときも、改善された部分より変わっていない部分のほうがまだまだ多いと思ったものです。それでも、マンデラさんが怨みではなく赦しを掲げて様々な肌の色の人たちが強調して生きていける国を目指したこと、自分の政治的な立場にこだわることなく、民衆の側に立って正しいと思えることは言おうとしていたこと(女性の問題、エイズの問題を含め)は、多くの人々に力をあたえました。マンデラさんのバトンを受けて、その先へと歩き続ける人たちが、これからも世界中に現れるはずです。
« ナイジェリアの言語 | トップページ | 3.11後の子どもたちの未来 »
「バオバブの著書・訳書」カテゴリの記事
- 雪山のエンジェル(2020.10.24)
- 『キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし』(2019.04.21)
- 『ノウサギのムトゥラ〜南部アフリカのむかしばなし』(2019.04.21)
- 『怪物があらわれた夜〜『フランケンシュタイン』が生まれるまで』(2019.04.21)
- 『メリークリスマス〜世界の子どものクリスマス』(2019.04.21)

