子どもたちが未来を生きのびるために
童心社が出している「母のひろば」(No.606 2014年11月15日発行)に文章を載せました。「子どもたちが未来を生きのびるために」という文章です。
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私は子どもの本の翻訳者ですが、もう長いこと「言いたい放題」の読書会で創作児童文学と翻訳児童文学の作品を比較しながら読んできました。そのうちに、それぞれの国の児童文学には特徴があることに気づくようになりました。日本の創作児童文学に関していうと、社会的なテーマを扱った作品が少ないと思います。日本の作家は、視野をあまり広げず、細かい心理などを書いていくのを得意とする人が多いせいかとも考えてきました。外国の作品には、特に中学生以上が読む作品になると、政治も宗教も環境問題も原発も出てくるのに。
先月のことです。子どもの本の団体がたくさん集まって、「フォーラム・子どもたちの未来のために」という会合を開きました。今の政府がさまざまに推し進めようとしている政策に対して、大きな不安を抱えている児童書の関係者たちが、声を上げることにしたのです。
プログラムの第一部は、憲法学者の小林節さんによる「特定秘密保護法の次にくるもの」と題する講演、そして第二部がリレートークでした。リレートークには、作家のあさのあつこさんと森絵都さん、絵本作家のいわむらかずおさんと武田美穂さん、そして子どもの本の翻訳者としての私がそれぞれ10分くらいずつ話をしました。
あさのさんはお孫さんに渡す世界を考えて、いわむらさんは戦時中の体験や自然の中での暮らしを踏まえて、武田さんは政府の法案と若手弁護士の会が出した解説書を読み比べて、森さんは作品を書く立場から、お一人お一人がご自分の言葉で話されたのがとても印象的でした。私も、原発事故以来おカミに頼らず自分で考え自分で判断するのが大事と学生たちにも話してきたのですが、特定秘密保護法によって判断するための材料が隠されるので、私たちの命まで危うくなる危険性があるという話をさせていただきました。
そのリレートークの際、森絵都さんが「私が駆け出しの頃いろいろな編集者から政治と宗教はとりあげるなというアドバイスをもらいました」がおっしゃったので、私はびっくりしました。児童書の出版が盛んな国で編集者がそんなアドバイスをしているのは日本だけでしょう。それでは、読んでいる子どもたちも世の中の仕組みに関心をもたなくなってしまい、口先だけの政治家にころっと欺されてしまうかもしれません。私が日本の児童文学の特徴と考えていたものは、もしかすると日本の出版社の特徴だったのでしょうか。
子どもたちには身のまわりの出来事についての本だけでなく政治や社会を扱う本もたくさん読んで、自分の目でたくさん見て、自分なりの感じ方、自分なりの考え方を身につけていってほしいと願っています。これからの世の中を賢く生きのびるために。
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選挙に行かない若い人が増えているという話を聞くと、日本の出版界のありかたも影響しているのではないかと思ってしまいます。なお、この拙文を読んでくださった北海道在住の加藤多一さんから、お葉書をいただきました。加藤さんにはずっと前にお目にかかったことがあるのですが、常々同じようなことを考えておいでだったようです。大先輩から思いがけなく言葉をかけていただいて、元気をもらいました。
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