『机の上の仙人』
『机の上の仙人〜机上庵志異』
の読書会記録
佐藤さとる著
岡本順挿絵
ゴブリン書房
2014
ヤマネ:本をパッと手にした時には、タイトルから漢字続きで難しい話かと思いましたが、読んでみたら、はじめの作家の大そうじの部分からおもしろく、ひきこまれました。少し読んでいくと小さい仙人が出てきたので、「コロボックル」シリーズのように小人が出てくるお話なのかなと思ってワクワクしました。異界のものがたくさん出てくるところがおもしろかったです。岡本順さんの絵は佐藤さとるさんが描く不思議な世界にとても合っていると思いました。
アンヌ:初めて読んだときは、再話かとがっかりしたけれど、2度目には、再話には、作者が物語のどこに感動し、自分の物語を構築したか、作者の秘密を見つけることができるような気がしてきて、できるだけ原典に当たって読み直していきました。この中で私が見つけられたのが、『小奇犬』と『侏儒の鷹狩』については『小猟犬』、『石持の長者』については、『石清虚』で、この二つは、最近の怪奇小説のアンソロジーにも選ばれていますし、私も子供の頃に読んだことがあって大好きな話です。違いは、小さな犬が、原典ではただ残されるのですが、こちらでは、はしゃぎ切っていて仕方ないから預かるとか、リアリティのある感じになっています。さらに犬のねぐらが、どうも、古くて表紙の読めない『聊斎志異』らしい本のようだ、とか、うまく変わっています。原典では、最後に寝台の上で主人公が寝返りを打ったとたん、子犬が紙のようにぺちゃんこになってしまうという終わり方なので、この『侏儒の鷹狩』のように、いつの間にか消えていく方がいいなと感じました。『石持の長者』は、岩の中の文字と、最後の方がごたごた話が続くのをすっきりと終らせているのが違う点です。原典では、狐や遊女の話が多いのですが、こちらでは、夫婦愛に変えてある物語が多いと思いました。特に、『衛士の鴉』と『侍女の鴉』の原典の『竹青』は、主人公には別の妻がいるので、鴉の妻が「私は漢水の妻でいい」といいと言ったり、子どもができたりいろいろあるのだけれど、こちらの二つの物語は鴉への変身と、空を飛ぶことへの憧れに物語をそぎ落としてあって、実にすっきりとしたものとなっています。最後まで読んだ読者が、中国にはこんな不思議な話があるんだと知り、世界が広がっていけばいいと思います。
ルパン:うまいなあ、と思いました。さすが佐藤さとる。小人を書かせたら天下一品ですよね。コロボックル世代としてはたまらなかったです。本家本元、真打出ました、という感じ。机の上の仙人が登場したとたん、小人が出てこないかとドキドキしながら引出をあけたあのころの感覚がよみがえりました。ただ、「佐藤さとる」の名前がなかったらどうかなあ。ひとつひとつのエピソードは特にどうということはなかったです。ただ、上質の小品を読んだ、という満足感はありましたね。ありきたりなお菓子でも、上手な人が作ると本当においしいじゃないですか。そんな感じ。昔話の再話のしかたもほんとにうまいし、安心して読めました。
ハイジ:仙人がほんとにいるみたいでおもしろかった。短編集のようで、ひとつひとつのお話が短いので読んでて飽きませんでした。恋愛の話はとくにおもしろく読みました。動物は、昔ながらの描き方なのかなあ、と思いました。
レン:主人公である作家の私も仙人も、どちらも年寄り(注:「主人公はそうでもないのは」という声があがる)だけれど、それぞれの話し言葉の文体が自然で、とってつけた感じがまったくなく、すごいなと思いました。この枯れた味わいが、最初ちょっととっつきにくかったのですが、章扉のイラストの助けもあって、だんだんなじみました。この画家さん、以前よりぐんとうまくなった感じがします。今回一緒に読んだ『シャイローがきた夏』(フィリス・レイノルズ・ネイラー著 さくまゆみこ訳 あすなろ書房)も同じ人の挿絵なんですよね。それぞれに物語を想起させる絵で、本作りとしていいなと。表紙はセピアっぽくて、ルビは入っているけど大人も手にとりやすそうなつくり。そのへんも狙ったのかな。お話の舞台を中国から日本に変えることで、子どもに親しみやすくなっていると思います。怪奇話なので、ひとつ読んできかせたら、子どもも読もうと思うんじゃないかな。
アカシア:表紙の書名にもふりがながないので、小さい子は読者として想定していないんでしょうね。コロボックルを子どもの時に読んだ大人に向けて書いたのかな?
レン:中学生くらいからかもしれませんね。歴史を学校で習ってからじゃないと、時代の感じがわからないから。
レジーナ:長く語り継がれてきた力のある物語が元にあり、それが上手にまとめられていて、ぐいぐい読ませますね。舞台を日本に変えているので、日本の読者にも馴染みやすいのではないでしょうか。それぞれのお話に挿絵が添えられているのがいいですね。この本と『シャイローがきた夏』、どちらも岡田さんの挿絵です。偶然ですが、一緒に見てみるとおもしろいのではないかと思います。
アカシア:これは昔出ていた『新仮名草紙』に加筆した本なんですね。原典も読みたくなりましたが、前の作品との比較もしてみたいですね。それと、どうせ創作の部分も入れるなら、この小さな犬も、もっと登場させたら、もっとおもしろくなるのにと思いました。
アンヌ:最近出た自伝的小説『オウリイと呼ばれたころ・終戦をはさんだ自伝物語』(佐藤さとる/著、理論社)を読んだのですが、小人についていろいろな物語を探していたころに見つけた物語が体の中に残っていて、それを整理して書いておきたかったのではないかと思いました。
ルパン:名作の続きは、それぞれが心の中に持っているものですよね。百人が百通りの続きを持っているのがいいと思うんですけど。
*この後、「コロボックル」シリーズの続き(『コロボックル絵物語』(全6巻 村上勉絵)を有川浩が書いているということについての話題で盛り上がる。
ヤマネ:佐藤さとるさんが、有川浩さんにバトンを引き継いだのは、中高生にとても人気のある有川浩さんに書いてもらうことで、今の中高生に「コロボックル」シリーズを読んでほしいという思いがあったのでは?
アカシア:『机の上の仙人』は、公共図書館に入っている冊数が少なかったですね。
レン:『聊斎志異』は、岩波少年文庫にもありますね(立間祥介編訳)。もちろん抄訳ですが。
(2015年3月の言いたい放題)
« 『太陽の草原を駈けぬけて』 | トップページ | 『シャイローがきた夏』 »
「子どもの本で言いたい放題」カテゴリの記事
- 『ガラスの梨〜ちいやんの戦争』(2019.06.10)
- 『世界を7で数えたら』(2019.06.10)
- 『夜間中学へようこそ』(2019.06.10)
- 『願いごとの樹』(2019.05.14)
- 『ぼくたちは幽霊じゃない』(2019.05.14)

