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2018年9月20日 (木)

『金魚たちの放課後』

Photo_3 『金魚たちの放課後』
の読書会記録

河合二湖/作
小学館
2016.09




アンヌ
:転校生が来ると同級生の男の子たちが金魚畑に連れていくという始まりはとても楽しくて、何が起きるのだろうと期待したのですが、金魚がうまく飼えない悩みで、ちょっとがっかりしました。動植物を死なしてしまう「死の指」の持ち主なんて悩む割には、それほどのこともなく曖昧な現実を受け入れて終わるという感じです。2編目の「さよならシンドローム」の方がまとまっていますが、主人公の語り口が中学生というより30過ぎの女の人のようでした。あまり感情の波がなくて、金魚との別れについても淡々と終わる。2編とも、こんな話かなという予想を裏切られる意外な終わり方ではあったけれど、少し残念でした。

カピバラ:何か月か前に読んで、そのときはおもしろいと思ったんですけど、今思い返したらあまり覚えてなくて……印象に残るところが少なかったように思います。ペットを飼う話は多いですが、金魚というのはおもしろいと思いました。現代っ子らしい生活が描かれていると思います。

レジーナ:美しい装丁の本ですね。金魚畑という言葉は、おもしろいと思いました。ただ、盛り上がる場面が特にないので、全体的にぼんやりしているというか、あまり印象に残る本ではありませんでした。

ネズミ:金魚畑というのがおもしろいと思いました。さいしょの話は、お父さんは描けない漫画家、お母さんは夜家をあけることの多い看護師、お姉さんもかなりぶっとんでいて、家族設定にも新しさがありました。でも、さらっと読めて、今の子どもが読むと、うん、うんって思うのかもしれないけど、全体的になんとなくこぢんまりした感じがしました。なんでそう思うのかなと考えてみると、主人公が自力で動いて発見していくのではないからでしょうか。後の話も、主人公が金魚を連れていこうとするときに、案外人まかせで解決したり、友だちとの関係をとらえなおすきっかけが、母親の会話だったり。子どもたちを応援しようという作家の姿勢は感じましたが。

ハル:言いづらいですが……この本に出会って最初に思ったのは「仲間がいた!」ということです。確かに私も子どもの頃、金魚を飼ってはすぐに死なせていました。でも、恥ずかしいし「死なせてしまった」と考えると怖いし、私はそこに気づかないふりで通してきましたが、主人公はこのことを真剣にとらえている。さらに転校生の遠藤さんは「たくさん経験してみないとわからないんだから、何回でも金魚を飼ってみろ」と言う。優しいようでいて、なかなかドライな発言だと思います。金魚のふわふわしたかわいらしさと、どこかひんやりとした怖さというか、グロテスクさというか、そんなイメージが、思春期の少年少女の気持ちとからまっていくようで、とてもおもしろかったです。同じように「仲間がいた」と思う読者も、実は多いんじゃないかと思います。

マリンゴ:最初に読んだとき、これはすばらしいな、いい本だなと思いました。特に前半が印象的でした。物語に死の匂いがたちこめているのに、どこかさわやか。金魚というテーマだからこそだと思います。次々死んでいっても、金魚だと凄惨な感じがしませんし。多くの子どもが金魚を飼った経験、あると思うんですよね。なので共感しやすい。私も昔、職場で飼っていたグッピーの水を換えたら、一気に大量に死んだことがありました。ちゃんと一晩汲み置きしたんですけど……。そういう記憶をよみがえらせてくれる力が、この作品にはありました。後半、女の子が外国まで金魚を連れていこうという場面には驚きましたけれど。自分だったら、こんなに執着しないでさっさと誰かにあげてしまうかな。あと前半の主人公の男の子が、自分の指は死を呼ぶんじゃないかと、不安にかられているところがいいなと思いました。根拠のない不安感って、あると思うんです。何をやっても死なせない友だちをうらやむ感情。そういう心の描き方がうまくて、とても気に入った作品だったので、みなさんはどう読まれるか、感想をお聞きしたいなと思って。とても参考になっています。

ハリネズミ:金魚を飼うって、小学生くらいでほとんどの子が体験するように思います。だから、そのくらいの子が読むと、おもしろくて共感をもつのかも。でも、私はあまり文章にひきこまれませんでした。転校生の遠藤さんの言葉ですが、p100に「わたし、しょっちゅう転校ばっかりしてるような気がするけど、冷静に考えたらまだ二回しかしてないし、学校だって三か所しか知らない。もっともっとたくさん……せめて百回くらいは転校しないと、法則とか傾向なんて見つけられないのかもなって、最近思ってる」とあるんですが、ませた感じの女の子だとしても、小学生らしくないなと思ってしまいました。第1部と第2部の間に、3年が経過してますけど、子どもがあまり成長していないのも気になりました。金魚畑はおもしろいけど、それ意外にもオリジナリティや新鮮みがあるとさらによくなるように思います。たとえば家族は従来型だし、インド人の同級生がせっかく出てきても、カレーを食べてるというだけ。私はそういうところが物足りなかったのかもしれません。p138の「女の子は、かわいくてきれいなものが好きなはずなのに」もステレオタイプ。この作者は何歳くらいの方ですか?

レジーナ:77年生まれのようです。

ハリネズミ:それにしては、ちょっと古い感じがしてしまいました。自分では書けないのにこう言っては失礼ですが、さらにもう少しがんばっていただけるといいな、と。

シア:私は金魚が好きなのでワクワクしながら手にしました。表紙もとても可愛くて。でも、2話収録で意外と少なく、淡白な1冊でした。この方、『バターサンドの夜』(講談社)の作者ですよね、前作もそんな感じの印象を受けたんですよね。内容が軽くて、まるでメレンゲみたいにふわふわしています。YAなので「迷い」みたいなのがテーマになるのはわかりますが、続きのないシリーズもののような感覚に陥ります。答えがなくてはっきりしないので座りが悪い印象です。主人公の灰原くんも遠藤さんも目立って反抗するわけでもなく淡白。生きていても死んでいても静かな金魚が題材なせいなんでしょうか、淡々としています。「死神の指」という表現の仕方とか、灰原君のお姉さんは深刻な感じで、おもしろくなりそうな感じだったんですが。いじめられる子は自分に原因があると思ってしまうけど、そうではないんですよね。今は偶然でターゲットが決まる世の中。そこはうまく掬えていると思います。ただ、この子たちは私とは反応が違いますね。みんなそうだと思いますが、私もいろいろ飼ってもすぐ死んでいました。オタマジャクシを飼っていましたが、日々どんどん数が減っていきました。なんだろうと思ったら共食いしてたんですね。人間が寝ている間に、彼らは壮絶なバトルロイヤルしていました。最後に勝ち残った1匹は、足や手は出たが巨大になってカエルになりませんでした。なぜ、と調べたらヨウ素が足りなかったことがわかりました。私は原因を追及しながら自分のせいなど思わずに飼っていたので、灰原君の反応とは違いました。この作者って、窮屈な世代の子どもたちを扱って、窮屈な日常を切り取るのはとてもうまいと思います。中高生が読んで私もつらいなと共感するにはいいのではないかと思います。

西山:おもしろく読みましたが……。収録2作の間に3年たっているんですね。「サヨナラ・シンドローム」の冒頭で「期末テスト」「数学」とあって、誤植か、姉が主人公になるんだか、なんだ?と思って立ち止まったのですが、まさか、3年後の話だとは……。小学5年生と中学生の関心事はちがう。なにが切実なのかは大きく変わる時期ですよね。どちらの読者に読んでほしいのでしょう。後半でアメリカに金魚を送れるかどうかで、検疫だのなんだの調べたりするして、村上しいこの『こんとんじいちゃんの裏庭』(小学館)を思いだして、子どもが自分でいろいろ調べていくおもしろさ、情報の具体性がおもしろかったのですが、でも最終的に、思春期の心のほうにウェイトがいってしまうのっで、調べるワクワクを追求していく方は二の次になってしまう。そこが作品の個性になると思うのに。だから部分部分はおもしろかったけれど、あいまいな印象になってしまう。転校ものとしても興味深く読めたけれど、そこも主軸ではないんですよね。これ、という像を結ばないので、おもしろく読んだのに記憶から消えやすい、そういう作品の一つのように思います。

レジーナ:今の母娘は距離が近いので、友人関係の悩みも話すのでしょうね。それをこういう形で物語に入れて、読者がおもしろいと思うかはわかりませんが、リアルなのだと思います。

ルパン(メール参加):おもしろかったです。「水色の指」と「さよなら・シンドローム」、語り手が交替するパターンはよくありますが、これは時間がずれているのでおもしろいと思いました。「水色の指」は、私も生き物を育てたり死なせたりと、いろいろあったので、灰原くんの気持ちがよくわかりました。

エーデルワイス(メール参加):水色の涼しげな地にユーモラスな金魚の絵の表紙ですが、ほのぼのとした内容ではありません。前半は灰原慎、後半は遠藤蓮実と、2人に絞った展開がすっきりしています。金魚を取り上げているところがユニークだと思いました。飼った体験がある子は、確かに金魚の死や埋めたことなどに共感すると思います。金魚を外国に送ることなど知らないことばかりで興味を持ちました。慎は、なんでもそつなくできる子なのに、生き物を上手に育てることができません。家がバラバラゆえの心の不安定が影響しているかもしれないことにもどこかで気づいています。蓮実との交流で生き物に接する何かが変わっていくところがいいですね。慎とは違い家族は安定しているけれど転校をくり返す蓮実。学校での居場所や友人関係などは、社会の荒波にもまれているような大変さを感じます。本当の友だちとは、と投げかけている気がします。

(2018年5月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)

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