『はじめてのはたらくくるま』(講談社)について
◆『はじめてのはたらくくるま』について
子どもの本にかかわる人たちの間では、ただ今この本が「どうなの?」という話題になっています。『はじめてのはたらくくるま』(講談社)。3−6歳向けの乗り物絵本なのですが、表紙を見ると、バス、郵便車、シャベルカー、消防車、救急車などと並んで、銃を撃とうとしている自衛隊員を乗せた車(高機動車というのだそうです)が(本屋さんで見た人に聞くと、この自衛隊車はオビで見えなくなっているそうです)。
びっくりしたのは、それだけではありません。全30ページのうちの6ページを使って自衛隊の乗り物が紹介されています。最初の見開き「りくじょうじえいたい1」は、戦車のオンパレード。次の見開きが「りくじょうじえいたい2」で、水陸両用車、地対艦誘導弾発射機搭載車(ミサイルを発射できる車ですね)などが載っています。そして3つ目の見開きは「こうくうじえいたい」と「かいじょうじえいたい」で、戦闘機いろいろ(ステルス戦闘機も)とか、対戦哨戒機とかミサイル護衛艦とか潜水艦などが載っています。
◆まず「くるま」がおかしい
ちょっと考えても、戦闘機や潜水艦は「くるま」じゃないですよね。「はたらくくるま」の本を作ろうという企画の中で、飛行機や船は出てきません。こんな見開きがあることを考えると、最初から自衛隊の乗り物を載せる目的で作られたのかもしれないと思えてきます。
◆次に「はたらく」がおかしい
戦車や戦闘機の目的は、「はたらく」じゃなくて、「たたかう」とか「てきをころす」ですよね。小さい子どもは、働く車の絵本や図鑑が大好きです。だからタイトルを見て飛びつく親子もいると思います。で、楽しく見ているうちに、別の意識がすり込まれてしまう。それって、今の政権がいろいろな手を尽くしてもくろんでいることなのでは?
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